会陰ヘルニアと海外での検疫

少し前にうれしいメールが届きました。

患者さんが海外の自国へ無事帰国されたと連絡いただきました。

ただここに至る道はとても困難でした。

・このわんちゃんは会陰ヘルニア(過去手術しているが再発)で自力排便ができない。朝昼晩に浣腸液を入れて散歩中に排便介助する生活をしている。

・帰国1週間前に相談を受ける。

・帰国される国のルールで、1ヶ月間の検疫係留が必要。自立した生活ができないと検疫すら受けられない。

・友達や知り合いに里親になって貰えないかと声掛けされたが、高齢で要介護な10kgを超える犬の引き取り手は出てこない。

・1週間で会陰ヘルニアの手術を行い帰国させることは出来ない。

・残りの1週間で愛護団体にも断られた。

・飼い主さんは悲観して安楽死を希望されている。

タイムリミットも迫り選択肢がありません。状況は最悪です。ただ、私はやりたくない事はやらない主義なので安楽死はこのケースでは行いません。

里親探しも時間切れで、重苦しい雰囲気が診察室を覆います。

私からの提案で、これからこの子を私の子にする。そして会陰ヘルニアのオペをする。そして日本に迎えに来てくれたらこの子をお返しをする。

もしかしたら迎えに来てくれないかもという思いも少しありましたが、後悔のない1番良い方法に思えました。

そしてこの子を譲り受けてすぐにポリプロピレンメッシュによる両側会陰ヘルニア整復手術を終え、自力で排尿排便が行え1ヶ月間の検疫係留にも耐えられる健康状態です。

そして約半年後、日本に迎えに来てくれました。

飼主さんもわんちゃんもとても喜んでくれました。

忙しい日々の仕事と並行しこのような事が重なると消耗します。知り合いの先生にもなかなかそれはできないねと言われると喜ばしく思いました。一方、事情も知らずに言いたい事だけ言う人やメリットが無いなど言う人もいました。

言うのは簡単、だけど行動する事が難しいのです。

何が出来るかは人によって違いますが、スキル、時間やお金をボランティア活動にかけられている方には頭が下がります。画像は頂いた写真です。元気でいますね。

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